南蔵王山麓
南蔵王山麓の東側の高原地帯には、緑の大地が広がり、高原野菜や酪農が行われている。終戦直後の開墾作業は困難を極め、人々の血のにじむような努力が続けられてきたと聞く。自然との闘いを繰り返して、今日広がる大地には、人々の尊い汗と涙がしみこんでいる。美しい自然の中に、歴史と伝統を後世に伝える記念碑が建立されている。
白石市の三住地区にある「水芭蕉の森」では広大なハンノキの湿地に大群生するミズバショウが見られる。木を啄む鳥、キツツキ類が巣を作っていた事に気づく。葉が繁る前の4月初めの森の中で。
街道物語り
山麓を縫うように南蔵王七ヶ宿線は白石市と七ヶ宿町を結ぶ。上山市萱平へ行く分岐点には、伝説にちなみ硯石と命名された大きな石がある。年中水がかれることがないという。
羽州街道が通る七ヶ宿町。ダム湖底に沈んだ旧宿場町もある。この街道を参勤交代路として江戸に上り下りした出羽の大名は13家に及ぶという。
街道には歴史を物語る風景が残る。七ヶ宿ダム湖に流れる白石川の支流横川は関宿のあたりで合流する。昔、この村外れは寂しい所で賽の河原と呼ばれていたそうだ。横川橋のたもとに地蔵尊がまつられている。左手に宝珠、右手に錫杖を持つ線刻地蔵尊碑には、すがる子供たちを救いあげる姿が刻まれている。
水の郷
横川集落には、湧水をひいた水路が各家の前にも流れている。丸太をくり抜いて水を流し込みシーソーのように水の重さで米搗きや粉挽きをするバッタリが復元されている。
水の郷百選に認定されている七ヶ宿町。水質保全のため様々な施策が図られている。横川渓谷は美しく透き通った水が流れる。横川渓谷公園には延長120mのやまびこ吊り橋や長老湖があり、南蔵王の不忘山1705mを眺める。
忘れずの山
1945(昭和20)年3月10日夜から11日未明にかけて、米軍3機のB29が不忘山に激突した。冬の蔵王連峰は猛吹雪だったという。地元横川集落の人達も残骸収集に動員されたそうだ。3機の墜落の原因は謎のまま。目的はなんだったのか解明されていないという。
1961年34名の犠牲者慰霊のため、不忘山山頂近くに「不忘の碑」が建てられた。2015年永遠の世界平和を願い不忘山が望める場所に不忘平和記念公園が完成した。生命の尊厳と平和の尊さを語り継がれる事を願い、ハナミズキやヤマザクラが植樹されている。山はこれからも見守るだろう。