山の幸
飯豊・吾妻両連峰の間にある栂峰(つがみね)は、飯豊町小屋地区の方々によって信仰の山として守られてきた。
山がもたらす水・鉱物・山菜やきのこ木の実などの食料・たきぎ・草木を材料とする生活道具の生産など、昔から「山の幸」が豊富なこの地域では、恵みをもたらす栂峰を「山の神」として信仰してきたといえる。
山仕事全てを支配している山の神を心の拠り所としてきた。登山口や山頂近くに神社・山道脇に石碑や木札・祠が祀られているという。山に対する畏敬の念を抱き、山に登り村の安全や豊作・家族の健康等を願ったのだろう。
集落一致して互いの幸せを守ってきたのだ。
「栂峯山大神」の鳥居の場所に、栂峰を向いて建っている複数の石塔がある。その中に文政13年(1830)3月17日建立の草木塔がある。3月17日は山の神の日といわれている。草木塔は、草木に感謝をし供養するという気持ちが込められたもの。
この草木塔は、平成2年(1990)に大阪で開催された花と緑の博覧会に展示されたそうだ。
川沿いに見えるのは、オニグルミだろうか。ブラリと垂れ下がった雄花。雌花は上向きにつき、赤色が目立つ。
縄文時代から食べられてきた木の実だ。鈴なりの実がつくことだろう。
雪の残る山に雨が降り、霧が出る。植物が潤う命の水だ。
アケビ、ウド、ウルイ、ミズナ。
雪の多かった今年も春の訪れとともに、フキノトウが姿を見せ山菜シーズンとなった。
山菜には野菜にない味がある。豊かな自然に囲まれている。
フジの花
いつもは気がつかない。この時期のフジの花の多さに驚かされる。
フジの強靭な蔓が、スギ・ホオノキ・トチノキなどの大木に巻きついて光を求めてどんどん上に伸びている。
巻きつかれた木の幹は、締めつけられ変形し弱っていく。これは蔓性植物による木の絞め殺しといわれる。
蔓は新しい蔓を伸ばして隣の木や枝へと巻きついていく。蔓切りは木を守る重要な山の手入れ作業なのだ。
蔓植物は森林内に侵入する強風などを防ぐ重要な役割を持ち、丈夫なフジ蔓は縄やカゴ、繊維などの材料として利用される。
タニウツギ
タニウツギのピンク色の花が咲きだした。1mを超える高さのオオハナウドの白い花が風にゆれて、林道沿をにぎやかに彩る。
クワ
養蚕の普及にともない品種が改良されてきたクワ。ヤマグワはもともと山に自生している。
雌花の長い花柱が残っている若い果実がついている。実は赤から赤黒く熟していく。