大地からの恵み
秋田県南東部に位置する湯沢市には「ゆざわジオパーク」が展開する。大地の成り立ちや仕組みを知り、自然遺産を保護しながら大地の恵みを活用した営み「ジオサイト」は市内全体に広く点在している。地域ならではの歴史や文化も含まれる。
皆瀬
皆瀬地区の道沿いに藁で作られた小さな姿が見え、その上に注連縄が張られている。鹿島様だろうか。疫病などの侵入を防いで集落の安全を願い村境に祀られてきた。毎年藁で作り、受け継がれてきた行事は地域の歴史を伝えている。道路整備により移されたり、人口減少や高齢化などによってその姿は少なくなっているという。
皿小屋集落では「ニンギョウサマ」と呼ばれているそうだ。火山活動でできた斜面が地滑りを起こしてできた湖沼群がある皆瀬地区。水に恵まれた環境なのだろう。皿小屋産直施設「佐太子館」には水車があり、皿小屋沼には伝説がある。
かつてはカルデラの中
ゆざわジオパークのジオサイトのひとつ。小安峡大噴湯(おやすきょうだいふんとう)は、大地が創り出した景観だ。
大地を侵食してきた水の働きや、地下深くで活動を続ける昔の火山活動の痕跡を見る事ができる。皆瀬川が長い年月をかけて大地を侵食してできた断崖絶壁の険しい谷は、約8km高低差約60mあるという。板状に積み重なった三途川層の隙間や割れ目から高温の蒸気と熱湯が噴出している。
約600万年前の火山活動で形成された三途川カルデラは北西から南東に幅約10km長さ約20km深さ数100mの巨大なものであったと推定されている。三途川層は、カルデラ湖の底に泥や砂、火山灰など堆積してできた堆積岩で、高松川流域にもみられ、植物や昆虫化石が発見されている。
高松川上流の高松(三途川・川原毛)ジオサイトの川原毛地獄では昭和41年(1966)まで344年間硫黄の採掘がおこなわれていたそうで、近くの泥湯では、山火事防止の監視を行っていたのだという。泥湯温泉には3種類の異なる泉質がある。川原毛地獄やその周辺では有害なガスが噴出している。栗駒国定公園の西栗駒一帯は、地下の熱資源に恵まれている。豊かな温泉や地熱発電など火山活動のなごりを活用している。