VICの窓から

2022年11月

秋色

 紅葉前線は山から山麓へ下りてくる。

白鳥も姿を見せはじめた。まわりの山々にも雪のたよりが届く。

紅葉していたドウダンツツジの葉も落ちて、カマキリの卵を見つける。下から順に咲き上がるハナトラノオ。花言葉は「希望」先端まで咲く姿は「望みの達成」ともいわれている。黒い体に黄色の毛があるクマバチが、上の花の最後の蜜を集めている。
暖かい陽をあびて生命をつなぐいきものたち。

 カラマツ(唐松)は、葉が黄色に染まって落葉する針葉樹。落葉松ともいわれる。まっすぐ伸びた円錐形の樹形。寒さに強く、成長が早い。
木材強度のある樹種として、スギやヒノキに次いで、盛んに植林されてきたそうだ。建築材などに利用されるほかに、
腐食にも強いカラマツは、尾瀬などの木道にも利用されているという。岩手県でも多く植林されてきたというカラマツ。
道路沿いの防風林の間には、強い風に葉を落として冬の到来を告げる風景が続いている。

善寶寺

 鶴岡市にある善寶寺(ぜんぽうじ)は、かつて人面魚で話題になった池のある寺。

 総門は、十二支を主体とする細やかで立体的な彫刻で装飾されている。左に「韋駄天」右に「毘沙門天」が門を守る山門の複雑な組物など、当時の大工彫刻の高い技術に驚かされる。龍王殿の屋根は波のうねりを表現しているといわれる。

 善寶寺は、竜神様を守り神として、古くから航海安全・豊漁祈願の対象として厚い信仰を集めてきた。本堂の前には那珂湊(茨城県)の石工が作った石灯籠がある。風化がすすみ刻まれた文字が分かりづらくなってはいるが、各地の港の名「札幌小樽港、越後新潟港、岩船、羽前国加茂港」とそれぞれの漁業関係者と思われる名前が読み取れる。

 本堂は青森ヒバ材が使われている。青森ヒバは、秋田杉、木曽ヒノキとともに日本三大美林の一つにあげられている。湿気やシロアリなどに強く、腐りにくい特性があり、中尊寺の金色堂など古くから神社仏閣に利用されている。善寶寺の本堂のヒバは、三厩産のヒバ材だという。北前船の上り船は、北海道から海産物を三厩港から木材を積んで北陸方面を目指した。江戸時代後期、青森県沿岸の各漁村の漁師たちは、四国の金毘羅詣りはなかなかできることでもなく、個人ないし漁師仲間(善寶寺講)で、善寶寺詣りを行ってきたそうだ。大漁祈願をして、魚供養をしてもらい、大漁満足海上安全のお札をいただき古いお札は寺に納めて帰ってきたのだという。

 「魚鱗一切之供養塔」の五重塔は、海の生き物達の供養塔として、漁業関係者の発願によって明治26年(1893)建立された。塔の側面には、十二支が彫刻されているという。多くの擬洋風建築を手掛けた事で知られる、棟梁高橋兼吉(たかはしかねきち)は、翌年、山居倉庫(酒田米穀取引所倉庫)を建設した。

-VICの窓から