VICの窓から

2022年6月

藤原嘉藤治の空

 岩手県紫波町にある東根山(あづまねさん)。こたつのような山容で地元の方々に親しまれているそうだ。
そのふもとに広がるビューガーデン。

 この時季はラベンダーやバラの香りに包まれる。

 宮沢賢治の友人で「セロ弾きのゴーシュ」のモデルとされる藤原嘉藤治(ふじわらかとうじ)。
音楽教師を辞め、賢治の全集出版に尽力。その後、賢治の理想の村づくりの精神を実践。
昭和20年、ふるさとの東根山の山すそに開拓者として入植した。開墾生活は困難なものであったという。
賢治の農民に対する思いに共感し、自らその精神を実践していった嘉藤治は、開拓者連盟を結成、開拓農民のために奔走した。嘉藤治なくして賢治は語れないとまで言われている人である。
開拓十周年に高村光太郎が訪れて、この眺めを「天然の舞台」と言ったそうだ。今その場所は、季節の花々と緑のステージとなって引き継がれている。丘の向こうに田園風景が広がり、山々が見渡せる。
農民として生きた嘉藤治もきっとふるさとの広い空の下で大きく深呼吸したことだろう。

水分神社

 ビューガーデンの出口は水分神社参道。太くて高い杉群に囲まれた神社。豊富な湧水で知られる。
江戸時代、藩の厳しい水源管理が行われ、杉は伐採されることなく守られてきたそうだ。

 湿気を好むヤグルマソウが咲いている。こいのぼりの竿の先の矢車に葉の形が似ていることからついた名という。白くて小さな花がたくさん咲いているように見えるが、花びらをもたない花なのだ。

 

 

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